Conferences and Workshops

通常、会議やワークショップは、日本およびヨーロッパの大学、研究機関との共同で開催しています。現在フランス国立極東学院と京都大学人文科学研究所が主要なパートナーとなっていますが、これに限らず、ISEASは30年以上にわたって日本における外国人研究者の国際的なコミュニティとして、さまざまな研究成果を発表する場を提供してきました。
日本における信仰と「知」のはざま - 中世・近世・近代を中心に - 北白川 EFEO Salon 2019-2020

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日本における信仰と「知」のはざま - 中世・近世・近代を中心に - 北白川 EFEO Salon 2019-2020

「夜の訪問者」−幽霊の比較文化史を考える

フランソワ・ラショウ(フランス国立極東学院・教授)

2020年1月17日 18:00 - 19:30

京都大学人文科学研究所本館1階セミナー室1

デファン侯爵夫人は「幽霊の存在を信じていますか」という質問に「いいえ。でも幽霊は怖いですわ」と答えた。18世紀後半のパリのサロン文化の領袖として一世を風靡した彼女に纏わる有名な逸話である。アメリカの独立宣言と同じ年に『雨月物語』が上梓された。サロンのエスプリ感を効かせたデファン侯爵夫人と江戸期の大阪が生んだ「畸人」の上田秋成は「怪奇」を楽しむ近世の代表的な文化人である。

京都・大阪・江戸を中心に全国的なスケールで隆盛期を迎えた「怪談集」・「幽霊譚」の日本と、それに比してヨーロッパは啓蒙主義による「知の体系」として民衆のあいだで長く口伝えされてきた昔話・メルヘンの怪奇譚蒐集に傾倒した。近世日本の幽霊譚と宗教改革を乗り越えたヨーロッパの亡霊出現の物語は「幻想文学」の誕生にも繋がる。

本発表では幕末・明治期 の漢学者・画家の石川鴻斎の『夜窓鬼談』と古文書・ゴシック建築の碩学のモンタギュー・ロウズ・ジェイムズの『好古家の幽霊譚』から時代を遡り、近世の文献における東アジアとヨーロッパの「幽霊の比較文化史」の可能性を探り、「幽霊像」の変遷の意義について考察する。